人生読本~20代からの読書日記~: 「佐藤オオキのボツ本」佐藤 オオキ著

2017年1月18日水曜日

「佐藤オオキのボツ本」佐藤 オオキ著

今回の本はこちら。

 

●書名・・・佐藤オオキのボツ本

●著者・・・佐藤 オオキ著

●価格・・・1800円+税


デザインオフィスnendoの代表、佐藤オオキさんによる「ボツにしたアイデア」について書かれた本です。


なぜ「ボツ」という、最後まで生き残ることのなかったアイデアについての本を出したのでしょうか?


佐藤オオキさんに依頼されるデザインは絵や形など表層的なものばかりではなく、ブランドイメージやビジネスモデルなどの抽象的なものも含めて多岐に渡ります。

そうした依頼の中でプレゼンをする際にはいくつかの案を提案するそうなのですが、その時採用されたもの以外はもちろん「ボツ」となります。


そうして大量の「ボツ」が生み出されるわけですが、メディアなどを通して我々の目に触れるのは採用された完成形だけです。


しかし完成形だけしか見なければ、そのデザインの本当の背景を知ることはできません。

「ボツ」の側から見ることで初めてアイデアの出し方がわかり、そのアイデアを磨き上げていくプロセスを知ることができるのです。


それに大量の「ボツ」には、ただの対案というだけではない重要な役割も秘められています。


この本では「ボツ」の様々な力を知ることができるのです。


① 多数の案をボツにして1つの方向性に絞り込むなかで、「せっかくやるなら、ここまでやらないと意味がない」と思ってもらえるほどの覚悟にかわる


現在のビジネス環境は日々劇的に変化しており、そんな中で佐藤オオキさんへの依頼も具体的で明確な指示のあるものから会社の認知度や新規事業などのようのな抽象度の高いものに変わってきているそうです。


それらの案件の中で複数の案をプレゼンする際は「極端に方向性の異なる案を多角的に提案する」ことを心掛けているそうです。


これらの提案はたとえどれを選んでも効果が出るような、それぞれの方向性においてのベストな案。


その中ならどれを採用しどれをボツにするのかと議論し考えることで、メンバー内での意思がより強固なものになります。

さらに採用された案は議論の中で磨きがかかり、プロジェクトそのものの成功率も高まります。


以上の効果を出すためには、いくつものボツ案が切り捨てられることが重要なのです。


② 一度捨てたモノにも、宝の山が隠されている


ボツになったアイデアはただ捨てられるだけではありません。


一度捨てたボツ案も他のボツ案などと組み合わせることで立派な新しいアイデアになりますし、それらの方向性が異なる場合でもつながることでより強いアイデアに成長する、ということもあるのです。


また依頼主の要求に対しボツになるほど極端に振り切った提案だったとしても、依頼主がその極端さに刺激を受けて許容範囲が広がり、再び採用される場合などもあります。


ボツ案は捨てられた後であったとしても、無限の可能性を秘めているのです。


③ 業界の習慣をあえて崩し周囲を刺激するために、時にはピエロを演じるつもりであらゆる方向からアイデアを提案していく


依頼をしてくる人たちは、その道のプロフェッショナルで、日夜その商品や企業そのものについて考えている人たちです。


しかしずっとその業界に浸っていると、知らず知らずのうちにその業界特有の習慣や常識に縛られてしまい新たなアイデアを出すことが難しくなってしまいます。


そういう人たちに、素人目線からのアイデアを本気で提案する。

業界の常識や都合をいったん横に置いておいて良い意味で非常識なアイデアや提案をすることで、現場の人たちが普段言わないけど心の中で思っていたアイデアが出てきたりするそうです。


自分たちの想像しなかった角度からの提案で業界の慣習が少しでも崩せれば、現場の人たちのアイデア出しのハードルを下げることができ、いろんなアイデアを出すきっかけになるのです。


ボツ案を含む大量のアイデアが、みんながやる気を出すきっかけになりチームが活性化するのです。



「ボツ」とは、結果的には世に出ません。

しかしある完成形を生み出すには、多くのボツ案が必要です。


にもかかわらず私たちは、これまで経験したさまざまな失敗から「ボツ」を恐れ、臆病になってしまいがちです。

それでは、あまりにももったいない。

「ボツ」を知り、多くの「ボツ」を生み出すことで、アイデアをさらに磨いていきましょう。


またこの本は多くのボツ案の写真やメモが載っているので、ボツを含めた企画の過程をたどることでデザイナーの仕事の本質が垣間見える貴重な一冊でもあります。




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